宮芸ブログ

宮芸ってどんなとこ?9

芸術アカデメイアコースのワークショップのひとつ「色彩のワークショップ」というのを月2回開講しています。様々な手法を用いて、色彩をいろいろな角度から学びます。現在は版画を通し、普段とは違う色彩感覚を取り入れることに主眼を置いて、制作を進めています。

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版画を刷る紙から制作しています。この上に刷り上がった作品ってどんなのでしょう。完成が楽しみです。

宮芸ってどんなとこ?8

特別講座の一つに今年から開講した「初めての日本画」というのがあります。5月20日から第1期が開講し、現在第2期に入っています。7名の会員さんが受講し、基本的な用具の使い方から始まり、植物や動物などをモチーフとした作品を制作しています。

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会員さんの作品をいくつか紹介します。

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12月からは第3期に入ります。これからどんな作品が出来上がるのか楽しみです。みなさんも日本画を制作する喜びを一緒に感じてみませんか?

物語を描く。

来月から、アカデメイアのワークショップで「物語を描く」をテーマに、各自描いてみたい物語を用意してもらい、それを絵にしてもらおうと思っています。物語を絵に描くといえば、西洋ではギリシャ神話とか聖書を題材にしたものとか日本なら「源氏物語絵巻」や「信貴山縁起絵巻」などが有名で、昔から物語を絵にするのはよく行われてきました。

源氏物語絵巻

源氏物語絵巻

信貴山縁起絵巻

信貴山縁起絵巻

特に西洋では、ある時期、それはきっと時代の要請から、ギリシャ神話などの特定の物語をいろいろな画家が描いていました。

アングル作 神々の父ゼウスとテティス

アングル 神々の父ゼウスとテティス

ですが、20世紀を過ぎると、そうした時代が要請するようなテーマというのはなくなり、各自個人の中にテーマを求めるようになります。1940年代のポロックのようにユング心理学の影響を受けてローマの創世神話を絵に表した「秘密の守護者たち」なんかは、そうした個人のなかの物語を絵に表したもののひとつでしょう。

ポロック作 秘密の守護者たち

ポロック 秘密の守護者たち

ところで、自分で好きな物語を絵に表そうというのは、あまり経験のない方が多いかもしれませんね。いかに絵画的に表現できるのか、どう絵にしていくのかが難しそうですが、自分の好きな物語には、必ず自分との関わりがあるので、何か新たな自分に気づいたりできるかもしれませんので、ぜひ楽しんでもらえたらと思います。

絵と身体性

 絵を描くというのは、思った以上に身体を使います。デッサンをするときにべたっと手を画面につけて描く人がいますが、宮芸では出来るだけ手をつけないようにとアドバイスしています。それは手が汚れるだけでなく、結果的に画面がこすられて汚れてしまうからです。でも、それ以外にもう一つ理由があるのですが、それは手だけで絵を描いてしまうと絵が小さく部分的になってしまうという欠点があるからなんです。手だけで絵を描いて何が悪いのかっていわれそうですが、たしかに手をつけて固定して描けば安定して描けます。しかし、やってみるとわかるのですが描いている部分にしか意識が向かわなくなるのです。そのため部分的な見方になり、全体が見えなくなってしまい均質な画面が出来上がってしまいやすいのです。つまり大きさのない絵になってしまうということです。ではどうするのか?宮芸では、腕全体を使って描くことを推奨しています。そして、腕全体を動かすというのは微妙に腰やもう片方の腕なども使うことになり身体全体が連動して動くことになります。そうして描いていくと、全体を見る力が生まれ、絵もスケールを増してくるようになります。

パウル・クレーやカンディンスキーが教授をしていたバウハウスというドイツの総合造形美術学校(20世紀初頭(1919-1933))の基礎課程では、絵を描く前に体操(写真)をしていたというくらいで、やはり身体を使うことは重要視されていました。身体を通して自分の中のもっと深い意識に接触するということを知っていたんですね。やはりそこに接触してこそ芸術といえるものになるのでしょう。

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バウハウスの体操風景

バウハウスの体操風景

ちなみに宮芸には、手先だけで描こうとすると手が震えてしまう方が何人かいらっしゃいますが、腕全体で描くことをマスターしてからは、全然他の人と遜色ない作品を作られています。あと、もし絵を描いていて肩が凝るという方は、手だけで描いている可能性が高いので、この機会に腕の動かし方をぜひ見直してはいかがでしょう?

さらに、腕全体で描くことは健康にもプラス?になるようです。ケネス・クラークというイギリスの美術批評家の「芸術家と老年」という文章には、ティツィアーノやミケランジェロを引き合いに出して、身体を用いる美術家のほうが年老いても文学者よりも力強い表現が可能であると述べています。平均寿命が40歳くらいのルネサンスの時代に、80歳を超えた二人です。しかも晩年の作品は人智を越えた魂の表現が見られます。たしか北斎も90歳くらいまで生きていたような。

ミケランジェロ作 rondaniniのピエタ

ミケランジェロ作 rondaniniのピエタ

葛飾北斎 晩年の作品

葛飾北斎 晩年の作品

さあ、1日2時間、10年専門家です。 がんばりましょー。

宮芸ってどんなとこ?7

特別講座のひとつに「石膏デッサンゼミ」というのがあります。10月1日よりスタートし、毎週1回1時間45分ずつ、計5回で石膏デッサンを基礎から学びます。今回の石膏像はマルスです。8名の会員さんが参加されて、講座を熱心に受講されています。

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石膏って難しいし、大変そうと思われるかもしれませんが、受講するとその面白さが分かるらしいです。宮芸での石膏デッサンの人気はなかなか衰えを知りません。

宮芸ってどんなとこ?6

宮芸では、2つのコースの他に特別講座というものを設けています。参加費が必要ですが人物画・ヌードクロッキー・日本画などを開講しています。8月31日から9月14日まで週1日3時間ずつ合計9時間で「人物画を描く」という特別講座を開講しました。

今回は12名位の会員さんが参加しました。モデルさんにポーズをとってもらい、各々制作していきますが、この講座の時間外にも描き込んでます。その中でちょうど制作を風景を撮らせて頂きましたので紹介します。

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絵を描くことは夢を見ること?

昨日、Amazonで予約していた、村上春樹のロングインタビュー集『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』が届きました。まだパラパラッとしか読んでませんが、とにかく内容もさることながら題名がすばらしいですね。かっこいい!
 

絵でも小説でもいわゆる芸術の世界というのは、夢を見ることと深く関わっているように思えます。眠ったときに見る夢というのは、絵とか芸術と同じように、それは無意識と呼ばれるものの働きでしょうが、社会をつくりあげているのとはちがう原理に突き動かされています。
社会的なものの外へ越え出ていこうとする衝動や合理性を越える英知がそこにはあるように思えます。

芸術人類学中沢新一著 によると、現生人類だけが、外の現実にしばられることのない自由な「心」をもっていて、だから、非現実的なことを思いついたり、実行したりする、ある意味「狂った生物」でもあると。どんなまともな人も心の内面には、まともでないものを抱えもっていて、良くも悪くもそんな自由な心を持っているからこそ、人類だけが、宗教と芸術を生み出したとさえ言えるかも知れないと。
妄想をいだくことがなく、自然と過不足のない対応を実現しているほかの生物は、宗教も芸術もつくろうとしなかったと。なんとネアンデルタール人には芸術がなかったらしいです。だからもしかすると夢も見なかったのかもしれませんね。全然関係ないかもしれませんが、確かに、現実の忙しさにどっぷりつかっているときは実際は見ているのかもしれないけど、夢を見ていないです。

で、こうした自由な心というのは、合理的な社会生活のなかでは、あまり表に出せませんし、それだけになると社会そのものが作れなくなります。だから、自分の心のほんとうの部分、心のいちばんの源泉になっている部分を抑圧しなければならないのです。それが心の活動の表面にあらわれてこないように「深層」に沈めたり、その活動に制限を加えようとします。そうしないと「合理的」な行動ができないからです。

でも、そうして社会に対応したとしても、自分たちの心の本質に向かいあおうとする自由な心は動きたがります。そこに絵とか芸術をやっていく意味というのがあるのだと思います。ようは意識と無意識、社会性と自然体のバランスをとろうってことなんでしょうが、その無意識とか自然体側にあるのが、絵を含む芸術ってことなんですね。よく絵を描くのはいったい何の役に立つのっていわれるけど、このあたりに回答のひとつがあるのかもしれませんよ。

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アルタミラの洞窟画 ここから芸術が始まった。

10月の石膏像

10月1日から石膏像が変わりました。一人週2コマまでの制作となります。よろしくお願いします。お風呂好きの方はぜひ一度描いてみましょう。

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宮芸ってどんなとこ?5

アカデメイアの新しいモチーフを紹介してから、2週間が経ってしまいました。宮芸にはもう1つのコース、「講座フリーコース」というのがあります。デッサン、水彩、油彩、パステルなどタイムテーブルに沿って、講座が組まれています。初心者の方はもちろん、もう一度確認したい、敢えて違うことに挑戦したいなど、いろいろな方がいらっしゃいます。

講座フリーコースのモチーフも紹介します。ブログの「ドローイング」で会員さんの作品がいくつか紹介されていましたが、これからどんな風に制作が進むのか楽しみです。

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9月の「絵のヒント」

昨日9月28日(火)に、ほぼ毎月恒例の「絵のヒント」を開催しました。テーマは「構図を考える」。 

構図というと、画面への入れ方と単純に思われがちですが、実はそれだけではなく、けっこういろいろな要素が絡み合って出来上がるものなのです。そこで、昨日みなさんにお話ししたのは、構図を決めるときに、まず主題(描きどころ、見せ場)を明確にして、それを中心に構図をとってみること(必ずしも画面の中心に配置することではありません。)や主題をよりよく見せるために視線の流れを考えること、そのためにどういう風に構成していくのかということでした。

特に昨日はその構成の手法の一つである「反復」について、フランスの画家・ボナールの初期の作品を見ながら解説してみました。

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この作品のタイトルは「午睡」。ヌードの女性が昼寝をしている場面が描かれているのですが、絵のなかの世界そのものがまさに眠りの世界を表しているような、そんな空気が流れている作品です。主題となるのは当然この寝ている裸婦ですが、よく見るとこの裸婦の流れるような曲線は、布団やシーツや枕、背景の模様、足の裏のフォルム、はたまたベッドの下のわんちゃんのフォルムと呼応しています。この曲線のフォルムの反復が眠りの空気感をつくりあげているといってもよいでしょう。もちろん色彩も眠りのイメージを出すことに協力していて、背景の壁紙やベッド台の赤と緑が彩度が抑えられたパステルトーンになっていることも、甘い雰囲気を醸し出すことと密接に関わっています。これが彩度の高い赤と緑なら、眠りどころではなくなってしまいます。

他にもいろいろな要素が構成されてこの絵の構図が出来上がっていますが、とりあえず昨日はこの反復という構成の手法についてお話ししました。