宮芸ブログ

展覧会を終えて。

今年で8回目となる倶楽部の展覧会が先日、盛況のうちに無事終了しました。

油彩画、水彩画、デッサンはもとより、パステル、色鉛筆、版画、写真と幅広い表現手段で描かれた100点以上にのぼる出展作は、毎年どれも力作ばかりです。

日々、倶楽部のアトリエで制作している皆さんの作品への様々な想いや、情熱(時には悩み、苦しみ)が、1点1点の画面に込められていて、指導している私達もついつい感動して見入ってしまいます。

それらの多くの秀作の中でも、印象深かった作品について少しだけ触れてみたいと思います。

Sさんの作品「Catalonian  Rose」「静かな時間(とき)」の水彩画2点は、水彩の扱い、技法ともに大変安定していて魅力的でした。

Uさんの「ひとやすみ」は油彩技法の良さを活かしながら、モチーフへの真摯なまなざしが感じられ魅力ある人物画に仕上がっています。

Aさんの「犬たちの広場」は、自分なりの世界観が、今後この作品から発展して生み出されてくれるきっかけになっていけば面白いのではないか、と期待してしまいました。

Kさんの”晩秋の公園”は水彩画F8号と比較的小さな画面でしたが、水彩らしい瑞々しい表現で大作に負けない雰囲気と魅力を感じました。

Tさんの”雑木林”、”マシンとの対話”は、完成度への飛躍が望まれますが、スケールの豊かさを感じさせる作品に見え、今後が楽しみです。

Sさんの”人物”、”I got a blue”はいずれも今回の出展作品中、最も卓越した描写力と完成度の充実を感じた画面でした。リアリティーの追求と、制作の粘り強さは見事としか言いようがありません。

Hさんの”チベット”は、確かな描写力を感じさせた上でドーミエのような明暗法を用いた、独特の美しい逆光の画面になっていて秀逸です。

そして、Yさんの作品”プロローグ”。今回の展覧会の中では、最も独創性を強く感じることができた人物画として心に残りました。安易な自己表現やマチエールの追求は、ともすれば陳腐な表現に繋がりかねないのですが、この作品は、今後の展開に大きな可能性を感じさせるものとして興味深かったです。

その他、写真作品や版画作品の中に、あるいは鉛筆表現やパステル画の中にも感動的な作品がたくさんありました。

絵画作品は、完成することだけが目的ではありません。

できれば、作者1人1人の日常から飛び出して、会場の壁面に展示され、多くの人の目に触れることが大切です。そうした展示空間の中から、これから描いていく次回作へ向けて新たな制作目的をつかみ取っていくことができれば、こうした倶楽部の展覧会は、皆さんにとって言葉では言い表せない多くの実りと意義を残してくれることでしょう。

また、来年会員の皆さんの「珠玉の1点」と、展示会場で出逢えることを期待しています。